« 『ドン・パスクァーレ』要約 第3幕 | トップページ | 『ドン・パスクァーレ』と『マルカントニオ氏』比較 »

2013.05.26

『ドン・パスクァーレ』の元ネタの元

更に遡ると、こうした喜劇の源流は、先の項でも名前が出ましたが、コメディア・デラルテというものに求められます。
イタリア語で commedia dell'arte 、正確に音写すると「コンメーディア・デッラルテ」くらいが近いかと思いますが、これは大体16~18世紀に全盛だったイタリア発祥の即興喜劇のジャンル名です。
16~18世紀、というと、オペラの誕生が16世紀末、ということで、喜劇オペラはその成立の頃からこのコメディア・デラルテに大変な影響を受けています。
このジャンルの特徴としては「主要役が仮面を着けている」「確定台本がなく即興に多くの部分を負っている」などがありますが、オペラに残した影響からすると「キャラクターのストックがいくつかあってその組み合わせで芝居が作られる」というのが大きいでしょう。例えば、

パンタローネ: ヴェネツィアの商家の老主人で、大金持ちだがケチ
ドットーレ:  ボローニャの大学出の学者または偽学者で、衒学的で雄弁
ザンニ(下僕): ベルガモその他の地方出身で、間抜けなタイプと利口なタイプがある
カピターノ:  突然乱入して法螺を吹いたり怖がらせたりする、空威張り軍人
女中:     世故に長けてコケティッシュな、若い女またはおばさん
恋人:     真面目に恋をする、男女のペア

こういった類型があります。こうしたキャラたちが、シチュエーションは毎回変わってもいつも登場し、喜劇を作り上げていきます。
シチュエーションは変わってもキャラは同じ、というのは、もし西日本出身でしたら吉本新喜劇を思い起こしてくださると、あれと同じです。どんな設定や筋書でも寛平ちゃんは寛平ちゃん(の持つキャラのうちのどれか)で、未知やすえは毎度お馴染みのギャグをやります。
または全国区なら、能狂言の狂言を思い浮かべていただくといいかもしれません。太郎冠者とか大名とか、よく出てくるキャラに固有名詞は大抵ありませんが、どの狂言でも大きく言うと同じような性格で同じような立場です。
更には、手塚治虫におけるスターシステムとか、シチュエーションの変わり具合に限度がありますがアメリカのシチュエーション・コメディ系のTVドラマとか、そうしたものにも通じるところがあるかも。

『ドン・パスクァーレ』に話を持っていくと、ドン・パスクァーレという役はまさにパンタローネそのままです(ローマ在住ではあるけど)。
マラテスタは、ドットーレ(医師)・マラテスタ、というだけあってドットーレなのですが、賢いほうのザンニの要素が強い気がします。実際、件の『マルカントニオ氏』ではドットーレと呼ばれていません。
ノリーナ&エルネストは恋人役ですね。コメディア・デラルテの筋は「恋人たちがいかに障害を克服して恋を成就させるか」を軸に進むことが多いのですが、それとも合致しますし、恋人のうち女性のほうは若い女か未亡人、というパターンにも当てはまります。。同時に、ノリーナは利発な「女中」役の要素も併せ持っているとも考えられるでしょう。

上表中で触れてないカピターノについては、『ドン・パスクァーレ』には出て来ませんが同じドニゼッティの『愛の妙薬』のベルコーレ役が思い浮かぶでしょう。
また勿論、上表中のもの以外にもコメディア・デラルテのキャラは沢山あります。

|

« 『ドン・パスクァーレ』要約 第3幕 | トップページ | 『ドン・パスクァーレ』と『マルカントニオ氏』比較 »

解説」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『ドン・パスクァーレ』の元ネタの元:

« 『ドン・パスクァーレ』要約 第3幕 | トップページ | 『ドン・パスクァーレ』と『マルカントニオ氏』比較 »